奇跡の花がここに咲く
一章:病院で一輪。

ボコッ!

バキッ!

相手の頬に拳が直撃する音が、体育館の裏で虚しく響く。
「や、やべぇよアイツら!」
「逃げろ!」
喧嘩を売ってきた5人組みは、鼻血を出しながらその場から逃げ去っていく。
「ハハハハ!ダッセー。ぶっ殺すとか偉そうな事言ってたくせにさあ。」

   
仲間の拓馬(たくま)と健(けん)が、相手たちに向かって笑う。
一方で、その仲間と一緒に喧嘩した俺の名前は、

中山(なかやま)優(すぐる)。

優しいと書く名前だが、その名前とは真逆で、現在不良である。

不良と言っても、授業をサボったり、売られた喧嘩を買うだけで、タバコも吸わないしワックスもかけず、髪すら染めない。(この長い茶髪は地毛だ。)
ピアスなどのカッコ付けも無かった。
・・・と言うより、そうすることが面倒臭い。
拓馬と健はオシャレ好きで、髪を金髪にしたり、耳に沢山のピアスをしている。

俺たち三人は桜田門高校の一年生。
高校に入って現在4ヶ月。つまり、今は8月上旬で夏休みなのだ。
この夏では喧嘩しかしてないが・・・。

そこで、夏がつまらないと言い出した俺に、拓馬がある提案を出した。それは・・・

「肝試しぃ?」


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