奇跡の花がここに咲く
「・・・クソッ!」
こういう時こそ、拓馬たちから喧嘩の誘いが無いかと待ちわびる。
腹いせに喧嘩相手をぶちのめす気でいた。
しかし、電話もないし、健も拓馬も今日はきっとWデートしているだろう。
こういうときには、俺は中に入ろうと思わない。
・・・好きな相手すらいない俺が惨めに思える。
そう思っていると、何だか空腹になってきた。
・・・そういえば、朝飯食わずに家を飛び出だしたんだっけ。
そりゃ腹も減るわ。
取り合いずコンビニでサンドイッチとチョコパンを買って家に帰ることを試みる。
家に帰る途中に、菊野病院を通りかかった。
同時にツツジの事を思い出す。
まだ未練があるのか。
気持ちを振り払い、病院に背を向けたとき、
「ユウーー!!」
聞き覚えのある高く綺麗な声。
とっさに病院の方を見ると、2階の左から3番目の窓・・・211号室からツツジが手を振っている。
一回、幻覚かと思い、試しに自分の手をつねって見る。
・・・おや?
痛い。痛いぞ。
と言う事は・・・あれは、昨日の事は夢ではなかった。