奇跡の花がここに咲く


「病院のご飯はあんまり美味しくなくてさ、こんなの食べたのは、僕の記憶上初めてかな?」
少なくとも、生きてる間には絶対食べてたと思う。
嬉しそうにパンを食べているツツジを見ていると、ふとあることに気付く。
「親父とか、見舞いに来ねぇのか?いるんだろ?」

「・・・いるけど、働いててほとんど来てくれない。だから、ずっと一人ぼっちっだったんだ。」

その言葉が、俺には「家庭環境が悪い。」と言う意味も込められているような気がした。
俺の家は特に家庭環境は悪くない。
親父とお袋のふざけ喧嘩はよく目にするが。
でも、何故かツツジの気持ちが分かるような気がした。

「そういえば・・・ユウってドコの学校通ってるの?」
「おれ?桜田門高校。」
「・・・・・わかんないけど、ドコにあんの?」
「ん~・・・あ、あれ。あの大学の研究棟の近くにあるのがうちの学校。」

大学の付属校というわけではなく、ただ単に近いと言うだけだ。

「お前は?どこの高校?」
「え・・・?・・・分かんない。6ヶ月も前から、こうやって入院してたから。」
6ヶ月・・・丁度高校入試の時だ。
「じゃあ・・・退院した後、どうすんだよ。」
それを聞くと、ツツジは突然黙りこくった。

何かまずい事でも言ったのか?
もしかして試験に落ちたとか・・・。
・・・だが、ツツジは意外なことを口にした。
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