奇跡の花がここに咲く
二章:学校に一輪

残った夏は、ツツジに出会った事で半分が充実していた。
ツツジがあと1ヶ月半で死ぬ事は分かっている。
それでも、何故かツツジの側にいると、そんな気が薄くなる。

ツツジ特有のポジティブオーラがそうさせているように思えた。

しかし、そんな夏も終わり、今日から学校だ。
夏は朝から晩まで病院にいられたのだが、学校じゃ会えない。
今日は始業式と話の3時間授業だが、それでも毎日ツツジに会うことに慣れてしまったのか、この3時間も憂鬱だった。

「あーあ、また今日から学校かよ。」
「つまんねぇ、抜け出してやろうかな。」
拓馬や健も、夏休みに慣れたせいか、机に足を乗せてつまらなそうに言う。
しかし、学校があるとはいえ、帰りには必ずツツジと会うつもりだ。
というか、一回は会わないと死ぬような気がする。

・・・俺は、ツツジに依存してんのか?

薬じゃないのに依存って例えは変だな。
やっと二時間目が終わり、椅子に腰をかけたその時、

『真央』

心の声。ツツジじゃない。低い男の声だった。

『真央』

誰の・・・声だよ。
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