奇跡の花がここに咲く
声はあまり遠くない。
声のした方、左斜め下を向くと、弘が暗い顔でこちらを睨んでいる。
ゾクッ・・・
凍りつくような寒気がした。
まだ猛暑のような暑さが続いているにも関わらず、腕には鳥肌がたった。
早く目をそらしたいのに、まるで金縛りに遭ったように目が離せなくなり、体まで止まる。
このまま体を通って、血や細胞から神経、脊髄を凍らせ、血液循環までも止めてしまいそうな・・・そんな殺気と寒気が伝わって来た。
たぶん、さっきの会話を聞いていたのだろう・・・弘はきっと、かなり怒っている。
でもおかしい。
普段からキモいとか、変人と言われても少ししか反応しなかった弘が、ここまでの殺気を向けてくるなんて。余程気に触る、もしくは怒らせるようなことを言ってしまったのか。
喧嘩の時など、相手に睨まれることなどしょっちゅう。むしろそれを見て喜ぶ俺でも、何故かコイツに睨まれると恐怖を感じる。
俺だけじゃない。
拓馬も健も、他の奴らも、その事ぐらい知っているだろう。
以前、弘がたちの悪い教師に身に覚えの無い事で因縁をつけられ、その際に至近距離で教師を睨みつけ、失神させたと言う噂も。
だから皆知っている。