奇跡の花がここに咲く

「拓馬は?」
「来てねぇ。何か具合悪いらしいぜ。」
「そっか・・・。」

はやし立てる声に悩まされながらも下校した俺は、ツツジに会うかどうかに悩んだ。
結局会うことが出来ず、家でずっとうずくまっていた。

いじめのような感覚は無い。物を隠されても暴力を振るわれたわけでもない。
ただ、こんな事でツツジに会えなくなった事が何よりつらい。

あと2週間も無いツツジの寿命。
こんな事で会えずじまいになることがつらかった。

犯人見つけたらいの一番にボコってやる。

そんなくらいにイラついてもいた。
そんな時、姉貴の呼ぶ声がした。

「優ー?」
「あ?」
「橘って先輩からお前に電話。」

橘・・・弘の事か?

取り合いず下に降りて電話を受け取る。
「もしもし。」
「中山か?」
「ああそうだよ。」
弘だった。電話越しにたくさんの人の声がするから、病院の公衆電話からかけて来ているのだろう。
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