フル・ムーン
第一話*ふわふわ
満月の夜。
少し肌寒くて、それでも風は優しくて
ひとりぼっちのわたしを照らす月の光が眩しくて
思わず目を閉じた。
涙が溢れる目を。
『いつまでそこにいるの?』
目を閉じた瞬間に、聞こえた声。
…男の声?
目を閉じたまま、心で答えた。
『どういうこと?』
目をそっと開けた。
薄暗い河原に、目を閉じる前とは違う変化。
目の前に、一人の男の人が立っていた。
16才のわたしと同じ年齢に見える。
まっすぐな、挑発するように危険で、優しい瞳。
かっこよすぎる容姿に、風になびく黒い髪。
「この世界から、お前を奪ってもいいかな」
「え…」
「………美月」
まっすぐに、その声は届いた。
第一話
『ふわふわ』
.