君に聴かせたい
「冗談。あんたらの前で弾けるかよ」
「えーなんで?あたし涼太のベース好きだよ」
今まで黙ってセッティングをしてた拓海が口を開いた。
「由里の耳に適ったやつなんてそうそういねえよ」
おちょくるのはそこまでだ。
シカトしてケースにしまったベースを抱え扉へ向かう。
ノブに手をかけたとき、後ろから拓海の声が聞こえた。
「マジでシネマに来ないか?おまえのベースが必要なんだ」
冗談など感じさせない声だった。