君に聴かせたい
「本当にありがとう」
テーブルにコーヒーが置かれた。
「いえ...」
「きっと麻梨は涼太くんに一番来て欲しかったはずだから」
「...はい」
由里が小さな声で「頂きます」とつぶやきコーヒーカップを手に取る。
「あの子、涼太くんと由里さんのバンドがほんとに好きだったのよ。
いっつもヘッドホンして聞いてるもんだから呼んでも聞こえやしないの」
「そうだったんですか...」
涼太!シネマのライブいつあるの?
麻梨の声が頭に響いた。
デビューが決まったときも自分のことのように喜んでたよな。
おせっかいでやかましくてシャレっ気もなくてさ...
沈黙をきらうようにおばさんが言った。
「麻梨の部屋そのままにしてあるの。
よかったら見てって」