君に聴かせたい
「そうかもな」
ぶっきらぼうに答えて先を急ごうと背を向けると、いきなり腕をつかまれた。
「なんでそんなこと言うの!後悔するのは涼太なんだよ!」
ぼんやりと麻梨の顔を見つめる。
なんでそんなに他人のことにムキになれるんだ?
珍しい動物でも見るような目に気づいたのだろう。
我に返ったように勢いよく手を引っ込めた。
「なっなによ。涼太が留年したら大笑いしてやるから」
うつむき加減でそう言うと踵をかえして走り去った。