colorful -カラフル-


 病室は思っていた以上に居心地が悪い。そもそも同じ部屋に他人がいるなんて、プライバシーが守られないじゃないか。

 「相部屋になったからには、よろしくな。」

 俺が上半身を起こして外を眺めていると、声を掛けられた。向かいのベッドに寝ていた男の人が体を起こしていた。

 「よろしくお願いします。」

 明らかに年上である彼に、一応丁寧な言葉で挨拶をする。すると彼は顔を緩ませて笑った。

 「病院では、歳なんて関係ないんだよ?」
 「…はあ。」

 意味の分からない言葉に、適当に相槌を打つ。

 「タメ語でいいよ、ってことだよ」

 男の人はまた薄く笑った。何がそんなに面白いのか、俺には理解出来なかった。この人は幸せそうに笑うんだな、って思った。

 「俺は浜野信吾。近くの大学に通ってる。短い間だけど、よろしく。」
 「あ、俺は、塚越琢磨です。高校一年です。」

 浜野さんがそう言ったから、俺も少しだけ自己紹介した。そしたら浜野さんはまた笑みを見せていた。
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