colorful -カラフル-
時計を見ると、朝の6時を過ぎた頃だった。カーテンの隙間から日光が洩れていた。俺はベッドの上で伸びをしてから、壁に立て掛けてある松葉杖を手に取った。ちなみにこの松葉杖は総合病院のだ。島村整形外科医のは母親が返しに行ってくれた。もう一生世話になることはないだろうな。
松葉杖をついて部屋を出ると、廊下にはもう既にちらほらと人の姿があった。まあ高校生なんていないだろうけど。部屋着を纏った病人がうようよしている。ほとんどが高齢者だ。俺は人にぶつからないように便所に向かった。病院の中で一人で楽々便所に行けるのは、結構幸せなことなのかもしれない。
部屋に帰る途中、エレベーターの前で看護師に会った。ついでに聞いておこう。
「あの、外のバスケットゴールって使っていいんですか?」
「ええ、いいですよ。怪我を増やさないようにね。」
その看護師は優しく笑った。そんな看護師に俺は続けて問い掛ける。
「何時から外に出ていいんですか?」
「7時の朝食を済ませれば、患者さんは自由時間よ。」
時計を見ると、あと30分くらいあった。暇だ。非常に暇だ。
「まだ質問はありますか?」
エレベーターの扉を開けながら、看護師は俺に問い掛ける。
「あ、いや、もう大丈夫です。ありがとうございました。」
「お大事にね。」
うっすらと笑みを浮かべながら、看護師はエレベーターに乗り込んだ。扉が閉まってから、俺は慌てて頭を下げた。