colorful -カラフル-
部屋に戻ると、さっきは閉まっていたカーテンが空いていた。そして体を起こした浜野さんと目が合った。
「おはよう。」
声を掛けられたから、俺は軽く会釈をしてベッドに向かった。
「若い奴は起きるのが早いんだな。」
松葉杖を壁に立て掛けると、浜野さんが再び話を振ってきた。ちょっと笑ってる。俺はもともと人見知りが激しくて、一定の人間としか仲良く出来ないから、こういうのは結構困る。退院したらもう二度と会うことはないのだから、愛想良くしなくても大丈夫かな?
「…まあ、毎日朝練ありましたから。」
言ってから気付いた。自分でそんな言い方しなくたっていいじゃないか。
「……毎日、朝練…ありますから。」
布団に入って、小さな声で言い直した。きっとこの声は聞こえていないだろうけど。でも自分の中では訂正しておきたかった。
「何か部活をしているのかい?」
「バスケ部です。」
「バスケか…。」
浜野さんは小さく呟いた。浜野さんもバスケに思い入れがあるのかな?でも深く追求する気はない。俺も、されたくないから。それから、7時までの間をこの息苦しいベッドの中で必死に耐え抜いた。