colorful -カラフル-
朝食はシチューだった。病院の食事はまずそうなイメージを勝手に持っていたが、そうでもないらしい。食事は例のごとくベッドの上にテーブルを出して、そこで食べた。準備も片付けも看護師がやってくれる。病院っていうのは何て楽な場所なんだ。居心地は悪いくせに。
「ごちそうさまでした。」
片付けていた看護師にそう言うと、微笑み掛けられた。その売り物の笑顔を何とかしてくれ。俺にはそんな物はいらないから。足を早く治してくれればいいから。
「塚越くんは今日は1時から精密検査に入るからね。それまでには戻って来てください。」
「分かりました。」
俺がこれから外に行こうとしてるのを知ってるかのような言いようだな。こんな退屈な場所で半日も無駄にできるかよ。
「どこか行くのかい?」
看護師が片付けを済ませ、外に出れば次は浜野さんが話し掛けてきた。いい加減しつこいぞ。
「バスケしに行ってきます。」
それだけ言って、壁に立て掛けてある松葉杖に体重を預け、部屋から出た。