colorful -カラフル-
脇に挟んだ松葉杖が地面に落ちた音がした。でもそんなの気にしない。小僧に背を向けて、スリーポイントシュートの大勢に入る。ゴールまでは約十メートルほど。少しだけ足が痛んだが、仕方ない。バスケ部のエースがこんな距離で外す訳にはいかないだろ?
「……すげえ。」
ボールは宙に弧を描きながら綺麗にゴールした。後ろからは小さな感嘆の声が聞こえた。少しだけ鼻が高くなる。片足使えなくても、捨てたもんじゃないな。
「分かったか、クソガキ。」
「兄ちゃん、バスケ部なの?」
さっきまでの威勢はどこに行ったのやら。目をキラキラさせながら、小僧は俺の足元に寄った。
「え、まあ。」
「すっげえ上手いんだな!」
「そりゃあ、小学生からやってたらな。」
俺は傍らに落とした松葉杖を拾い上げ、体を支えた。そして地面に転がっているボールを取りに行く。
「小学生から!?じゃあ俺も頑張れば兄ちゃんみたいになれるのか?」
小僧の言葉に俺は振り返った。相変わらず瞳を煌めかせている。
「……俺みたい?」
言葉を疑った。俺みたいって…俺は今骨折してるんだぞ?それなのに、俺みたいになりたいのか?