colorful -カラフル-
さっき、小僧に腹が立って言い返したことを思い出した。片足が使えなくたって出来ることはあるよな。シュート練習とか、筋トレとか。体は鈍るけど、それで一生バスケが出来なくなる訳じゃないから。俺はボールを持って小僧の前まで行った。
「バスケ、好きなのか?」
「うん!上手くなりたいんだ!」
小僧の姿は、昔の自分を思い出させた。俺も上手くなりたくて仕方がなかった。放課後に毎日体育館に残った。勉強もしないで、バスケしかしなかった。今思えば懐かしいな。
「学校の奴らが、休み時間にバスケするといつも俺にだけパスをくれないんだ。」
しょんぼり言う小僧に、俺はボールを渡した。すると彼は顔を上げて俺と目を合わせる。
「…やってみ。スリーポイントのコツぐらいなら、教えられるから。」
小僧は一度視線を落とし俺の右足を見てから、再び目を合わせた。そして満面の笑みを、俺に見せていた。