colorful -カラフル-
昼の鐘が中庭に鳴り響いた。暑さのせいでもあるが、俺も小僧も怪我人のくせに汗だくで、少し笑えた。病院の鐘は十二時に鳴るようだ。時計を見れば長針と短針がピッタリ重なり合っている。
「もうお昼だ!」
「昼飯って何時からだ?」
「十二時だよ。」
俺は確か一時から精密検査が入っていたはずだ。昼飯食ってから行った方がいいのかな?でももう少しだけ、バスケやりたいな。
「あ!まりなだ!」
俺が少しの間、黙り込んで考えていると、突然小僧が走り出した。どこに行くのかと目で追えば、道に一人の女の子がいた。その子は黒い目隠しをしていた。一瞬見ると、まるで鉢巻きが額からずり落ちたかのような。なんで目隠ししてんだ?それだけが気になって、俺も小僧と女の子の方にゆっくり近寄った。
「まりな!」
「翔太?」
女の子は目隠しを取らずに目の前まで駆け寄った小僧の名前を言い当てた。それと同時に初めて小僧の名前を聞いた。
「お前、翔太っていうのか?」
「おう!お前は?」
年下のくせに生意気だな、なんて考えながら俺も名乗った。すると女の子はこちらに顔を向けた。本当に見えてないのか?俺も女の子の方を見たが、彼女の瞳には俺は映っていない。