colorful -カラフル-
「あたしは水口まりなです。よろしくお願いします。」
彼女は小さく微笑んだ。実際に微笑んだかどうかは分からないけど、口元が少し緩んでいた。
「……。どうして目隠しなんかしてんだ?」
素朴な疑問を口にすると翔太が俺の腹を叩いた。本気で叩いていて、少し痛かった。
「な、なんだよ?」
「空気読めねーな!兄ちゃん。」
お前に言われたくはないと思いながら、足を少し後ろに引いた。俺はもうすぐ検査に行かなきゃならないのに。ふと彼女の方を見ると、哀しそうに微笑んでいた。聞いちゃいけなかったことなのか?
「ごめん。」
「…いえ。あたし、緑内障なんです。」
緑内障?もしかして、目が…見えないのか?驚いた。耳にしたことがある病名だったが、実際に患者に会ったことなんてない。近くに障害者なんていないし。そんなことを考えていると翔太が再びバスケットコートに戻った。それを目で追いかけていると、彼女は口を開いた。
「病院の人は、みんな知ってるから…。最近入った人なんですね。」
彼女はまた、薄く微笑みを見せた。その無理に笑う感じが凄く嫌だと思ったんだ。眉間にシワが寄るのが自分でも分かった。
「昨日入院したんだ。」
「そうなんですか…。」
俺が言えば、彼女は納得したように声に出した。
「翔太のお友達なんですか?」
「さっき知り合ったばかりだ。朝からバスケをしてた。」
「バスケ?」
すると彼女は軽く笑った。何が面白い?何がこの子を笑わせている?この病院の人たちはみんな、幸せそうに笑うんだな。でもこの子の笑顔を見ると、何故だか切なくなった。