colorful -カラフル-
俺が汗だくになりながら練習をしているのを、そいつはじっと見ていた。集中が切れ始めイライラしてきたから、それをそいつに当てた。
「何だよ?」
心底機嫌が悪かった。ボールを手玉に取りながら、俺は学ランに向き合った。その制服は今日の対戦校だった。
「…いや。バスケ、上手いんだな。」
羨ましそうに言うそいつの顔に見覚えはなかったから、きっと試合のスタメンではなかったんだな。バスケっていうのは人気のくせに五人プレーだから、補欠にさえ入れない部員がたくさんいる。試合に出れる一握りの人間になるのは、思っているよりも難しい。今はスタメンの俺も、同じような気持ちをしたこともあった。
「……。」
沈黙が流れた。バスケが上手いと言われても、どうしようもないだろ?俺は再びボールを構えた。
「お前、塚越琢磨だろ?」
名前を呼ばれても振り向くことはなく、シュートを決めた。籠の縁にも当たることはなく、綺麗な音を立ててボールは吸い込まれて行った。