colorful -カラフル-
後日。バスケットゴールがある近所の公園に再び足を運んだ。部活が終わった後、夜暗くなってまで狂ったようにバスケに明け暮れていた。凄く寒い日だったのにゴールを使われていて、肩を落としたのを覚えている。
「塚越琢磨!」
フルネームで俺を呼ぶ学ランのそいつ。また会うとは思わなかった。今日はバスケットボールを左手に持っていた。
「…手、怪我してんじゃないのか?」
悲しげに笑うそいつを見て、しまったと思った。別に言わなくてもいいことじゃないか。そいつが下を向いたから俺も気まずくなって、顔を俯かせた。
「…駄目かな?」
「何が?」
「怪我してるのに、シュート練するの。」
駄目?べつに駄目じゃない。駄目じゃないけど。そんなに…
「そんなに、バスケが好きか?」
気付けば質問は口から出ていた。自分でも愚問だと思った。好きだからスタメンになれなくても部活を続けるのだろうし、好きだから骨折しても練習をするのだろう。俺と、何も変わらない。
「……負かしたい奴が、いるんだ。」
そう言ったそいつの瞳は、見たこともないくらい真っ直ぐで綺麗だった。負かしたい奴…。俺も最初はそんな感じだった。だから、そいつの気持ちは痛いほど理解できた。