colorful -カラフル-
「足、痛むか?」
顧問の質問と同時に試合再開の笛が鳴った。赤い文字も再び時を刻み始める。応援の声も、ボールの音も、靴の音も、俺の耳を犯していく。走りたい。パスをもらって、ドリブルをついて、シュートを決める。今まであそこにいたんだと思いながら、体育館の中央に目をやる。補欠の奴もなかなか頑張っている。応援する気なんてなれない。本当なら俺があそこでパスをもらうはずだった。本当なら俺がシュートを決めるはずだった。誰かこの醜い俺を止めてくれ。男のくせに泣きそうだ。
ふと、俺の頭に手が触れた。その手は細いくせに力強く、俺の髪を乱した。視線を上げたら、微笑むマネージャーの姿があった。
「塚越、格好よかったよ。」
自分が愚かでしょうがない。どうしようもない馬鹿だったのに、マネージャーはそう言ってくれた。
「……先輩、目薬貸してください。」
痛んだ足を延ばして、マネージャーの目を見ないように小さく言った。そうすれば、マネージャーは優しく微笑みながらしょうがないなあと言うのを知っているから。鞄から目薬を取り出し、俺に渡した。限界を感じ、俺は上を向いて目薬をさした。綺麗に目にヒットしたが、目を閉じれば溢れた目薬が流れ出た。
「さっきから目痛かったんすよね。」
きっとマネージャーは気付いてるんだろうけど、少し強がってみた。先輩だからって子供扱いされたくない。するとマネージャーは俺の頭にタオルを乗せた。見上げると、目が合ったから一瞬でそらした。
「お疲れさま。」
マネージャーのその一言と同時に、試合終了の笛が鳴った。