colorful -カラフル-
でも、願っただけで変わるなら誰も苦労なんかしないんだ。
「足関節果部骨折です。」
医者は貼られたレントゲン写真を見ながら説明を始めた。医者の最初の言葉を聞いた時、既に目眩がした。骨折?冗談じゃない!
「骨折って…」
何も言えない俺の代わりに顧問が後ろで口を開いた。いつもの威厳がない。少し笑える。篠原達に見せてやりたいな。
「総合病院で手術を受けてもらいます。」
意味が解らない。理解不能だ。手術?骨折ごときで手術?骨折って放っておけば治るもんだろ?
「綺麗に折れた訳ではないので、放っておいても綺麗にくっつくかはわかりません。手術をして、粉々になった骨を取り除いた方がいいです。」
「それって…全治、どれくらいかかりますか?」
顧問の声が震えていた。いつもの顧問じゃなさすぎる。情けない。俺はどれだけ周りに迷惑かけるつもりだよ。
「まだわかりません。総合病院でもう一度精密検査を受けてください。紹介はしますので。」
おい、島村のオッサン、やる気なさすぎだろ。俺の足、治す気あんのかよ…。みんなになんて言おう。篠原なんてきっと凄く心配してるだろう。下を向いてそんなことを考えていると、またマネージャーが俺の髪を乱した。振り向けばさっきよりも引き攣った笑顔を向けていた。
「まだわかんないって。大丈夫だよ!」
そんな無理矢理な笑顔をさせているのが自分だと気付けば、胸が締め付けられた。頑張って俺を励まそうとしているんだろ?本当はマネージャーだって辛いのに。自信過剰な訳ではないけど、やっぱり俺は小学生の頃からバスケをやっている訳で、並大抵の奴らよりは全然上手い。秋の新人大会だって、きっと俺がいないとチーム的に厳しい。何とかして治さないと。でもまだどうなるか分からないから。俺は顧問ともマネージャーとも目を合わさないように、下を向いた。