colorful -カラフル-


 島村整形外科医は松葉杖を貸し出してくれた。使いたくもない松葉杖をつきながら、俺は川沿いを歩いた。代金とか総合病院とかのことは全部顧問がやってくれた。帰りはマネージャーも一緒に帰るって言ったけど、一人で帰りたかったから断った。

 「先輩、凄く心配してたな…」

 申し訳なくて、自己嫌悪に陥る。エナメルが重くて、肩にしょい直した。エナメルを持って松葉杖をつくのは結構困難だ。肩から斜めに掛けて背中に回す。そうしながら一歩一歩ゆっくり土手の上を歩いた。今頃、みんなカラオケ楽しんでるんだろうな。少し寂しくなった。

 「塚越ー!」

 呼ばれた方を見れば、何故か篠原がいた。エナメルを横に置いて河原に寝そべっていたようだ。篠原は俺に気付いてこちらに走ってきた。

 「カラオケは?」
 「先帰ってきた。つーか待ってたんだよ、お前を!」

 やっぱり篠原はイケメンだ。こんなこと言われたら、嬉しくないはずがない。男の友情っていうのも、なかなか良い物だな。でも、俺は篠原を裏切ることになるかもしれないから、一気に顔が険しくなるのが自分でもわかった。
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