colorful -カラフル-


 「…ごめん。折れてた。」

 心の中で、もう一度謝った。篠原の顔を見ることが出来なくて、下を向いた。

 「すぐ治るんだろうな?」

 ちょっと怒っている。でも今日のは俺が悪い。これから先篠原に迷惑かけることもたくさんあるだろう。出来ることなら、黙っておきたい。でも、約束したから。

 「……精密検査をしなきゃならないらしい。いつ治るか、まだ分からない…。」

 篠原の影が微かに動いた。そして溜め息が聞こえた。落胆しているんだろ?でも一番ショックが大きいのは俺だよ。

 「なんであんなことしたんだよ!」

 突然篠原は大きな声を上げた。言い返せない。俺は自分のミスで仲間に迷惑をかけた。

 「あれはファウルじゃなかった!」

 知ってる。俺が勝手にしたことだ。なんであんなことしたんだろう。別に仲間と金を賭けてた訳でもない。好きな女の子が見に来ていた訳でもない。ただ単に、格好付けただけだった。相手のディフェンスを擦り抜けて、ダンクスマッシュを決めた。綺麗に決まった。確かにあれは綺麗に決まっていた。でもその直後、俺は着地に失敗をし、体ごと床にたたき付けられた。

 「お前、究極の馬鹿だわ。」

 篠原はそう言うと河原に置いてあるエナメルを取り、背中を向けて歩き始めた。遠く離れていく背中を追い掛けることは出来なかった。
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