colorful -カラフル-
松葉杖をついて学校に向かった。本当は行きたくなかったけど、しょうがない。総合病院の入院手続きを明日しなければならないから、今日はとりあえず登校。バスケがない学校はもはや俺の行く意味はない。
「おはよー。怪我大丈夫?」
席につけば、隣の席の武内が話し掛けてくる。これは結構習慣だったりする。大丈夫な訳がないのに、一応心配してもらったのだから大丈夫な振りをしなければならない。人間ってなんて面倒なんだ。
「ありがとう。大丈夫だよ。」
「そう。良かったね!」
何が良かったのか分からない。明日から入院なのに、何も良くない。なんだか無性に腹が立って、聞こえない振りをした。松葉杖を下に置き、一限の授業の準備を始めた。隣を見れば、篠原の席は空いていた。そうだ、今日は本来なら朝練があるんだ。きっと篠原はまた頑張っているんだろうな。
「今日も朝から疲れたなー。」
「いや、でも今日は調子良かったぜ!」
わいわい言いながら男子の集団が教室に入ってきた。声でわかった。今のは栗山と篠原の声だ。俺は声に振り向くことが出来ず、気付かない振りをした。必死に今日の英単語テストの勉強をした。この単語帳を開くのは初めてだ。
「塚越っ!はよ。」
「お、おお…。」
栗山は目が合うと、挨拶をしてくれたがその隣にいた篠原は冷たい目で俺を見ていた。そうか。俺は昨日の怪我で、時間だけでなく友達まで失ってしまったのか。じゃあ代わりに得た物はなんだ?一日中必死に考えても、島村整形外科医の松葉杖以外に思い付く物はなかった。