黒猫 - 迷子の不良黒猫ちゃん - 【完】
「いやー、九条のおかげで旅行に行けるな!サンキューな、九条!」
塚原は私の背中をバシバシと痛いくらいに叩きながら言った。
『いや、だから何もしてないってば。それより、旅行って何処に行くの?』
「ん?あー…、何処だったかな。たしか……○×街の温泉旅館だったぞ。」
それを聞いた瞬間、私の心臓がドクン、と鳴った。
○×街。
私が以前住んでいた街。
麗と、一緒に過ごした街。
「……どうした?九条、お前顔色悪いぞ。」
『………なんでもない。』
「そうか…。旅行は四日後だ。体調管理しとけよ。」
塚原の言葉に、私は曖昧に頷いて答えた。
そして、その日は帰った。
四日後、
私はあの街に行く。
ーーー…帰りたくても、どうしても帰られなかったあの街に。