黒猫 - 迷子の不良黒猫ちゃん - 【完】
「麗に……聞いたんだ。」
悠平くんは少し寂しそうに笑ってそう言った。
『いつ?』
「鈴ちゃんが、この街を出て行った夜に。」
『………。』
「鈴ちゃん、麗が……死ぬ前に出て行っちゃったから。
俺、入れ違いになっちゃって……。」
そう。
私は麗が亡くなる前に出て行った。
麗が亡くなった事実は、麗の親に、その日に電話で直接聞いたんだ。
見たくなかった。
麗が死ぬ瞬間を。
結局、私は逃げているだけなんだ。
私は約束を守ることで、少しでもその罪悪感から救われたかったのかもしれない。
しかし、悠平くんは聞きたくないことを言った。
「麗は……鈴ちゃんが約束を守ることを望んでないよ。」
意味が、分からない。
だって、
だって麗のお願いだった。
約束だった。
「麗は、鈴ちゃんがひとりでいることを望んでないよ。」
私は耳をふさいだ。
聞きたくない。
聞きたくない。
「えっ!鈴ちゃんっ!?」
私は、また走り出した。
結局、私はいつも逃げている。