黒猫 - 迷子の不良黒猫ちゃん - 【完】






『…、すごくダサい』


率直に感想を述べると


「しょうがないじゃない。家にあったんだもの」


不満そうに頬っぺたを膨らませるお母さん。

あんた何歳だよ、とは言わないでおいた。
怖いから。


…てか、え?
こんなのが家にあったの?

何でだよ。
謎だよ。


私はフーッとため息をついた。


ま、いっか。

新しく買うのも勿体ないし。

節約好きのお母さんのことだから、家にあるもので済ましたかったんだろうし…。


渋々受け取った私を見て、お母さんはウフフ、と笑う。


「でも、信頼できる友達とかの前なら外していいわよ。」


穏やかに言うお母さんに私は冷たく答える。


『お母さん。私、友達は作らないよ。』


だってこれは決めてることだから。
あの夜から。


『パートナーも友達も……私にとっては〔魔女〕だけだから。』


ふと、昔を思い出す。



―――「私達、友達よね。」

うん。
友達だよ、ずっと。

記憶の中の〔魔女〕に答える。

そして、目の前にいるお母さんに告げた。


『〔魔女〕を裏切りたくないの。』


あの子との、最後の約束だから。


私はそう言って
自室に戻った。





「鈴ちゃん。まだ魔法という名の呪いに縛られてるのね………。」




少し悲しそうに呟いたお母さんの言葉が
私に届くことはなかった。






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