走りだした夢
から隊列を作り、トップスピードまで持っていけれるようにお膳立てをする。この隊列のことを列車という。4,5人(最大9人)の列車の一番後ろにエーススプリンターがいて、先頭を走る選手が位置取りをしながらスピードを上げていく。先頭がもう限界に達すると、前から脱落して次の選手が抜けた選手よりも速く走る。こうして、エーススプリンターのトップスピードとエーススプリンターがトップスピードをどれだけ維持できるかという距離が緻密に計算されて、列車を引く選手は走っている。最後のエーススプリンターが同士のガチンコ勝負は本当に物凄い気迫がテレビ画面を通じて伝わってくる。その選手を応援していなくても、みれば手に汗がにじんでくる。もし、応援する選手、好きな選手がガチンコ争いの中に居れば、手に汗握るどころか、手から滝の様な汗が流れ出すだろう。
 想像してみてほしい。自転車ロードレース以外で、参加選手200人近くのレースや競技はあるだろうか? 世界あらゆる全てのレースの中で、ゴール前に20台、30台の集団で押し寄せてくるレースはあるだろうか? F1レースでもオートバイロードレースでも、ゴールラインを割るその時に車体が1秒以内に何台ゴールするだろうか? 多くても3台くらいではないだろうか? 200メートル手前から6,7台が横一列に並んで走ってしのぎを削りながら、もがいているレースは自転車ロードレースだけではないだろうか? 
 「今日はタイムトライアルだから、ゴールスプリントは見れないね」
 「今日の見どころを解説すると、カンチェラーラがステージ優勝できるかどうかかな」
 風太の頭の中ではツール・ド・フランス2010は始まっているらしい。
 「ランスがステージとって欲しいな。約9キロなんだし」
 「だから、ランスはもう無理だって。癌を克服しても年齢の壁は越えられないって」
 もう、駄目なやつの話をするなというような目で隼人は僕を見る。
 レース映像がテレビ映し出された。
 プロローグのスタート地点はオランダ。雨が降っていてスピードを出すことが出来ずに苦戦を強いられていた。
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