走りだした夢
激坂ヒルクライム
サイクルショップ電光石火から電話があったのはお昼少し前だった。
 ショップに着くと、3台のジュニア用ロードバイクが輝いている。
 「写真で見るよりカッコイイ」
 僕は見惚れてしまった。風太も隼人も見惚れているようだった。
 隼人のお母さんが間違えて僕の自転車を海に捨ててしまった事件。弁償する、弁償しなくていい。どちらも譲らず平行線だった。
 隼人のお母さんが「頼むから弁償させて」とうるさいので承諾したお母さん。
 僕は隼人のお母さんとサイクルショップ電光石火で自転車を見ていると、お母さんと隼人が一緒に店にやって来た。その後を風太も金魚のフンのように付いてくる。
 「隼人君、誕生日プレゼントだからね。どんな自転車でもいいよ」
 お母さんが隼人のお母さんに聞こえるように言っているのが分かった。
 隼人のお母さんは慌ててやって来て「止めて下さい」と言った。
 「分かりました。でも、自分の家の自転車は自分の家の者が買うというのがいいと思いますが」
 こんなことで僕も隼人も自転車を買ってもらえることになった。風太はそれを聞いて「2人が自転車を買ってもらうならオレも」と、親に頼んで3人が自転車を買ってもらえることになったのだった。
 ロードバイクなんて高価なものを買う予定はなかったが、出世の話がほぼ決まっていたし、電光石火の店長の勧めも効果がありロードバイクを買ってもらえることになったのだった。
 風太は赤色のロードバイク、隼人は白のロードバイク、僕は青色のロードバイク。
 3人はサイクルショップ電光石火の前で自転車を並べて写真を撮った。
 「あっ、そうそう。君達遠くまで走りに行ったりするの?」
 「まだ分からないですけど」
 実際はどうだろう。今日は7月29日。風太と隼人の引っ越しはお盆前にはと聞いている。3人で遠出するの
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