走りだした夢
という技である。
 「それでは成績を発表するわね。1位隼人君」
 隼人は社宅の公園を囲ってある、どれも高さが同じように見えるけど、微妙に違う石の上に乗った。もちろん、一番高い石の上である。
 「2位…」
 僕はドキドキした。ゴールした時は目をつむってしまったのだ。琴ちゃんの発表が待ち遠しい。クイズミリオネアのみのもんたのようにじらしているわけではない。でも、たった0.?(レイテン何秒)かがとても長い時間に感じた。たかが友達3人でやる遊びのレースになんでこんなにドキドキ緊張してくるのだろう。勝てたかもしれないという希望が時間を伸ばして、じらしているのだろうか?
 「2位ふう…」
 僕の耳に飛び込んできた『ふう』の響き。これで僕は負けたと確信した。さっきまでのドキドキは富士山から真っ逆さまに奈落の底に落ちていく。怒りともいえないなんとも落ち着かないウネウネした気持ちが心に渦巻いてくる。そんな時だった。
 「…た君と流ちゃん引き分け」
 「引き分け? オレの方が少し速いって」
 風太が審判に異議を申し立てる。
 琴ちゃんは「引き分けです。これ以上だだこねると負けにするわよ」
 厳しい顔をして言った。
 風太は「チェッ」と砂を蹴りあげた。
 「本当に? 本当にひぃきわぁけ」
 僕の声は裏返り、変な発音になっている。
 「凄いな」
 隼人がハイタッチを求めてきた。僕はズボンで汗を拭いてハイタッチした。
 「オレもオレも」
 風太もハイタッチを求めてくる。もう、勝負が引き分けだということはどうでもいいらしい。その声にすぐに振り向きハイタッチをする。
 「私もやりたい。ずるーい」
 琴ちゃんがふくれっ面で走って来た。
 「みんなで丸くなろうぜ」
 隼人の一言で4人が丸くなって4人でハイタッチをし
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