走りだした夢
るところだったりすると録画を見る楽しさが半減? いや、半減どころか1000分の1減してしまう。どうせ、あいつが勝つんだ。この逃げはもうすぐ掴まるんだなと思えてくる。そんな切なさを何度も繰り返してきた。今年はこの切なさを味わいたくないのだ。そんなことを両親に言うと「じゃあ、始めから録画でみればいいじゃない」と簡単に言うのだ。生放送、ライブ中継を見るから意味がある。今走っている選手は、今この時間に遠いフランスという国で、同じ時間? なんかややっこしいな。フランスは時差があるから日本と同じ時間にはならない…。けれど同じ時間というか、同じ空気というか、同じ空間でレースをしていて、自分の応援がダイレクト、直接選手の走る力になるのだから、ライブ中継をしているのなら、やっぱりその空間で同じ空気を感じたいと思うのは当たり前なのだ。
 時計を見た。いつ寝ている時間はとっくに過ぎ去っている。あと15分ほどで10時になろうとしていた。
 僕は何をやっているのだろう。僕の考えた作戦は水の泡と消えた。とりあえず寝て、起きてから作戦を考え直さなければならない。そう思ってタオルケットをかけた。
 5時に目覚ましをかけておいたが起きることが出来ずに6時に起きた。すぐに着替えて、朝食のパンを口にほおりこむ。牛乳で流し込む。
 「昼間で激しい運動をしよう。自転車で走り回ろう」
 外に出ると、まだ6時半なのに容赦なく太陽が強い日差しを照らしてくる。水も何も持たずに出た僕は水を取りに戻った。自転車用のボトルを3本自転車のカゴにいれた。
 半田市は坂道が多い。特に僕の住んでいるところは三つ坂町。町名に『坂』という字が入っているからか、やけに坂が多い。僕が向かった先は知多半田駅前。駅の近くに鴨宿ホールがある。鴨宿ホールから西に行くと急勾配の坂があり、上りきった辺りが鴨宿公園の入り口にあたる。坂を下って更に西へ行くと僕の通っている鴨宿小学校がある。知多半田駅→鴨宿小学校ルートは東西どちらか来ても急勾配である。漕いで上がることが出来なほどのである。東か西どちらが急勾配かといえば西ルートである。特に鴨宿公園手前20メートルぐらいが急坂というよりも激坂だ。僕の実力は、東ルートはクリアしたが、西ルートはクリア出来ていない。もちろん、風太も
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