Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「ピーターパンの絵本だよ。僕も同じのを持ってる」
「お前、あたしをいくつだと思ってる!馬鹿にすんな、今年で12になるんだぞ」
「あれ、じゃあちょっと早かったかな?」
「お前、お袋の友達にしてはおもしろいヤツだな。気に入ったぞ」
美和はそう言ってふぁんたの胸を度突いた。
「美和ちゃんこそ、気持ちと反対のことばかり言って。会った頃の姉さんと同じだ。きっとシャイなんだね。そういうタイプは優しい人が多いんだよ」
「けっ、丸め込もうたってそうはいかないぞ」
美和は本を抱いてバタバタと走って行った。
「ふぁんたって、素敵に変わってるわね」
美和の軟化した態度を感じてわたしは言った。
「あの子は、大人の中で精一杯背伸びしてるんだよ。いつまでも主任さんに子ども扱いされて、ちょっぴり反抗してるのさ。・・・それよりダサイお色直しってなあに?」