Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
ハプニングは突然に
金曜日の閉店間際、二人の若い男が来店し、数十万円分の〔新幹線回数券〕の購入をカードでしたいと言ってきた。
旅行代理店では〔新幹線回数券〕という商品があり、出張の多いビジネスマンを多く抱えた会社などがお得意様だ。
カードの場合はカード会社に照合するシステムになっているので、応対した樋口さんは
「少々お待ちください」
と言ってパーテーションの奥に来た。
その日ふぁんたは明日のパーティーの最終打ち合わせでホテルに行くため会社に来ていて、パンフレットの整理などしてわたしを待っていた。
「スージー、カードで29万6千円のご購入です!」
照合を待っている間に樋口さんは言った。
「それは凄い。今月も売り上げ目標達成ですね」
スージーは嬉しそうに言った。
「盗難カードだったりしてぇ」
小林さんが冗談ぽく言って、みんなどっと笑った。
盗難カードで商品を購入した上、不正にさばいて現金化している連中がいるらしいという噂は聞いていた。
―あとで思えば、その二人組はいかにも胡散臭かった―
ルルルルと電話が鳴って小林さんが受けた。
「スージー、いえ、鈴木課長、警察からです」
小林さんの声は震えていた。