Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
運動会の当日母はどこからか借りてきた六畳間ぐらいのブルーシートを敷き、そのど真ん中を陣取って一人わくわくした顔で正座していた。
あんまりニコニコしているものだから、気味が悪かったくらいだ。
「おい、お前のかあさん何考えてんだ。頭おかしくなったのと違うか」
クラスの男子が冷やかし、わたしは恥ずかしくて真っ赤になった。
けげんそうな顔をしている周りのギャラリーには目もくれず、お昼のサイレンが鳴ると同時に母は叫んだ。
「三年二組の仕出し弁当班のみんなは、ここに集合!!」
こっぴどく教頭先生に注意されてる母の手作り弁当は、クラスのみんなの絶賛を浴びた。でもわたしは、母がすごくいいことをしたとは思わなかった。〔余計なこと〕と思った。