Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
こんなこともあった。
わたしが小学校高学年の時、何十年に一度の流星群が見られると世の中大騒ぎだった。
当日は学校の屋上が、保護者つきで開放されることになった。
「べんとら、べんとら」
母が夕方から騒いでいた。
「うるさいなあ、何なのそれ」
「UFOを呼ぶのよ。流星を隠れ蓑にしてやって来るかもしれないの!」
「バカみたい」
「そうかなぁ、でも桜井君だって来るのよ」
母はふっふっふと怪しげな笑いをした。
「誘ったの?」
「うん誘った。あなたが喜ぶと思って」
「・・・なんて?」
「ウチの子桜井君のこと好きみたいだから、今夜一緒に流星を見ながらUFOを呼びましょうって」
桜井君はクラス委員で勉強ができてスポーツマンでハンサムで優しい女子のアイドルだ。あんまり素敵だから女子の間で〔協定〕ができていた。抜け駆け禁止令である。
明日から仲間はずれになるっ!
わたしは急な腹痛で行けない、ということにした。