Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「スージー!」
樋口さんが声をかけた。
「やあ、皆さん。ふぁんた君も。楽しく飲んできましたか?」
スージーがカウンターから、みんなに声をかけた。
「楽しいのなんのって、ふぁんた君がいればこの世はバラ色よぉ」
渡辺さんがはしゃいだ。
ママが何か弾いてとふぁんたに頼んで、彼はいつもどうりピアノに向かった。
「ふぁんたちゃん、これお客様からよ」
ニューハーフの美穂さんが、ふぁんたにノンアルコールの飲み物を運びピアノに置いた。
ふぁんたは客にありがとうと微笑んでリクエストを受けながら、美穂さんに話しかけた。
「スージー元気ないみたい」
「さすがふぁんたちゃん、実はねぇ社のみんなには内緒らしいんだけど、不況で他の支店が揃って赤字ギリギリなんだって。新宿支店はなんとか今のところ黒字キープしていて安心してたらしいんだけど、他支店の補い分のノルマを来月から課せられるらしいわよ。スージー珍しく深刻な顔してママに言ってたもの」
「そう、大変なんだね」
ふぁんたがピアノを弾きながらチラッとスージーのほうを見た。