Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「で、ノルマはどのくらい増えたの?」
いつのまにか渡辺さんが美穂さんに忍び寄って来ていた。
「わあ、びっくりした。いつの間に!もしかして聞こえた?」
美穂さんが驚いて目を丸くした。
「まーねー、美穂ちゃんてば自分では気づいてないと思うけど声大きいから」
渡辺さんが言って美穂さんは
「ほんとぉ?ぜんっぜん気づかなかった」
と両手のひらでムンクの絵の様に頬を挟んだ。
―そーだろーなー、気づいていればあんな大声で内緒話しないもの―