Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「うん、行ったよ。あちこち」
ふぁんたはいつものように重箱に大量に作ってきたお昼を、みんなによそってやりながらニッコリ笑った。
「ふぁんた君て、もしかしておぼっちゃま?」
小林さんが羨望のまなこで尋ねた。
「パパの道楽で世界中の珍しい現地の野菜や果物を仕入れるのについて行っただけだよ」
「でも、お金が無いとやっぱり行けないでしょう?」
樋口さんが食い下がった。
「そりゃパパはある程度お金は持っていたよ。でも旅行は凄く倹約するの。ディスカウントチケットでとりあえず現地まで飛んで、あとはヒッチハイクやローカルバス。各駅停車でのろのろ走る安い鉄道や、ただで貨物列車とかトラックの荷台に乗ったこともあったよ。日本のOLの人たちが海外で使う一回分で、僕ら何か国も行けるよ」
なるほどねぇ納得できるとみんな頷いて、ころっと食事に切り替えた。
ほんとにチームワークのいい会社だ。