Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―





娘の私から見ても若くて美人だった母は度々男性に言い寄られていた・・・らしい。どうして知っているかと言うと、彼女自身が自慢げに言うからだ。


「今日も、告白されてしまった。ふふふふっ、いいでしょう」






おせっかいな近所のおばさんたちも、とっかえひっかえお見合い話を持ってきた。


「子供が年頃になってからじゃ、反対されちゃうわよ」



そんなとき母はすまして言うのだった。


「おばさんは私を独り身だと思っていらっしゃるみたいだけれど、実は主人がいるのです。船乗りで一年にいっぺんぐらいしか帰ってきませんけど・・・」





「おかあさん、別のおばちゃんには北海道に単身赴任してるって言わなかったっけ?」


おばさんが帰った後で私が尋ねると


「あら、そうだっけ?」


と母が悪びれた様子もなく言ってのけた。
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