Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
話に夢中になりよそ見をして歩いていた若い二人組の男が、わたしたちとすれ違いざまふぁんたにぶつかってきた。
「気をつけろ!この!」
そのうちの一人が険しい形相で吐き捨てるように言った。
「なによ!そっちこそ!」
乗り出すわたしをふぁんたが制した。
「すみません、僕たちぼーっとしてて。道が狭いのに僕こんなにデカイから!気をつけます。本当にごめんなさい」
ふぁんたは誠意をを持った言い方で謝った。
だが、媚びるようにペコペコした訳ではない。
相手の顔がみるみる穏やかになった。
「あ、いや、俺達もちぃーとばかし幅とってたかもな。ま、いいってことよ!彼女とじゃ縦に並んで歩きたくねーよな」
男はふぁんたの方をぽんぽんと叩いて、鼻歌をうたいながら行ってしまった。