Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「そんなことないよ。姉さんがとても優しい人だって僕はよく知っているよ。ただちょっぴり表現が下手なだけだよ。謝ることも感謝することも難しそうで実は簡単なんだと僕は思う。〔ありがとう〕と〔すみません〕たった五文字でお互いハッピーになれるんだもの」
「あなたと接したお客様は、みんなニコニコして帰って行くって樋口さんたち言ってた」
「嫌な顔も、微笑みも、どっちも伝染しやすいんだよ。僕はどうせならって笑っているだけ。姉さんだって笑顔がとても素敵だよ。めったに見れないけどね」
わたしは、褒められるのが苦手だった。
母のせいでわたしはいつも褒められていた。
けれどもそれは逆に母がだらしないからだと思うと、嫌でしょうがなかった。