Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―





「ふぁんた、わたしは母のことが好きだったかどうか分からないの。母が亡くなっても寂しくは無かったし、わずらわしさが無くなってほっとしたようなところもあった。涙一つ流さなかったのよ」



ふぁんたは、黙ってわたしの話を聞いていた。



「学校でも、近所付き合いでも、PTAでも、いつも問題を起こすのはわたしではなく彼女なのよ。母は大人たちに嫌われていたわ。わたしなんて面と向かって何度も嫌味言われたもの。なのに彼女はいっつも笑って、気にしない気にしないって。・・・とにかく母は面倒が嫌いで、勝手で、現実逃避家だったのよ。わたしは散々振り回されたわ、やっと自由に・・・」



「バンビ!!」


ふぁんたがさえぎった。



初めて見る怖い顔をしていた。
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