Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「ふぁんた」
「なあに、バンビ」
「その名前、やめてって言ったでしょ!」
「いいじゃない。僕はこの名前大好きなんだもの」
「・・・そうね。それにわたし、姉さんぽくないし」
「姉さんじゃないほうが良かったな、僕」
わたしは、いつかのようにドキッとした。
「バンビが姉さんじゃなくて妹だったなら、もっとスムーズにバンビって呼べたのにね」
―そっちか―
わたしは、はーっとため息をつき、ぶすっとしてふぁんたを見上げた。
「妹だった・・・ならね」
「・・・なら、といえば、そうだバンビ奈良公園へ行こうよ!バンビが沢山いるって樋口さんが言っていた。僕、煎餅をあげたいんだ!」
ふぁんたは、わたしの気持ちなどぜんっぜん気づかずに言った。