Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
勤め先のスーパーから買ってくる母の食材は、ときには子供の買い物よりひどかった。
「誰が夕飯にこんなものを食べるの!」
わたしはテーブルに山積みされたプリンを呆れて見ていた。
「だってぇ、マネキンさんの試食、お客様誰もしてあげてなくて」
「かわいそうだったっていうの?」
「一生懸命声かけてるのに、だあれも」
「おかあさん!この前の夕食は同じ理由でイチゴの山だったわよね」
「そうそう、あれはとっても甘くておいしかったわ。いくら一年中季節のお野菜や果物が食べられるといってもやっぱり旬の物をそのときにいただくのが一番よね。俳句のお勉強にもなるし」
わたしは無言で母から買い物カゴを取り上げた。
自然に夕飯の当番はわたしになった。