Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
系列会社の親睦会で初めて太郎に会った印象は底抜けに明るい笑顔だったそうだ。
太郎の周りには自然に人の輪ができていた。
母はというと一人ポツンとたたずんでいた。
当たり前のように太郎は母に歩み寄り、たわいもない話を始めた。
最初戸惑っていた母は、太郎の話に引き込まれしだいに和んでいった。
結果、出会って間もないというのに、つい自分の身に起こった経緯を話してしまった。
包み込むように真剣な眼差しで母の話を聞いていた太郎は、何か自分に出来ることはないかと尋ねた。
ふと左手の薬指に目を留めた母は、大丈夫とその申し出を辞退した。