Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
ニコニコしている神父を見て、わたしはふぁんたを思い出した。
―ふぁんたは弟じゃなかった―
わたしにはそれが一番の喜びだった。
わたしは急に会社のみんなに会いたくなった。
ふぁんたの話がしたくなった。
―そうだ、これから会社に行こう―
「フォード神父さま、話して下さってありがとうございました」
「いいえ、よかったら教会にも来て下さいね」
わたしはええと頷いて神父と別れた。
「ああ、そういえば」
わたしは走り出した足を止めて振り返った。
「母のお墓、掃除していただいてありがとうございます」
「申し訳なかったが、わたしはそんなに頻繁にはしてないですよ。お参りにはよく来ましたが・・・。背の高い青年がよく来て磨いてました。いつもたっぷりと花を抱えてね。君たちは知り合いじゃないのですか?」
神父の声は、わたしの耳に何度も何度も心地良くこだました。