Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
母はわたしが赤ん坊の頃から、しょっちゅう写真を撮っていた。
小さいうちなら、どこの家でも山ほど写真を撮るだろうけれど、母は死ぬまで毎月のようにわたしを撮っていた。
―別にどこかに出かけてわざわざ撮ることもしなかったが・・・。
わたしが「成長期ならともかく、とっくに背の伸びも止まった娘を記録してどこが楽しいの?」と言うと、「将来カメラマンになりたいの、その練習」などと言ったり、「あなたがお嫁に行ったあと茶飲み友達にアルバム見せて、私にはこーんな綺麗な娘がいるんだからと自慢するの」とか脈絡のないことを言って話をはぐらかすので、ほっといた。
けれども、カメラマンの練習やアルバムに貼るだけなら、焼き増しなど必要ではないはずだと思ったわたしは、直ぐにピンときた。
―父に送っているに違いない―
そういえば母が夜中に無心に手紙を書いているのを何度か見たことがあった。写真を手紙に添えて出しているんだなと思った。