Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―





「賞金は百万円なのよ」


「へっ?」


「ミス多摩川」


「ミス多摩川?」


「多摩川から歩いて十分圏内に住居がある人で、未婚の女性なら誰でも応募できるんだって。テーマは〔未来へ流そう美しい川〕よ。グランプリを取ったら先頭に立ってゴミを捨てないようにってキャンペーンして歩くんだって」



またはぐらかされてしまった、と思った。



しかし、母は一度口にしたことはまず撤回しない。しょうがなくわたしはそれで会話を進めた。



「あたしはいやよ、恥ずかしい!未婚の女性でいいなら母さんだって資格あるじゃない。母さんが出れば!!」


本当にそんなコンテストがあるのか疑わしかったが、


「そうかぁ、その手もあるわね。髪型と服装で何とかなるかもしれない。なにしろ百万円だもの」


と、まじめに鏡を覗き込む母を見たら、その後はなんにも言えなくなってしまった。






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