Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―





冬休み前にやっとわたしの就職が決まった。


母が大喜びで隣近所にふれ回ったのは言うまでもない。

―しかも紅白まんじゅうつきで・・・




卒業式を数日後に控えたある日、会社から電話がきた。



「正式の勤務は四月一日からの予定だったのですが、社員が一人事故で入院し、急に手が足りなくなって、普段なら何とかなるのですがちょうど卒業旅行のシーズンと重なってしまって・・・」


一生懸命説明する、近々上司となるその人の言葉にわたしは久志と計画していた自分の卒業旅行を諦めた。案の定彼はむくれた。


「俺と会社とどっちが大事なんだよ!」


「そういう次元の問題じゃないでしょう?」


「どうせ俺は次元が低いよ!!」




信じられないことに、それが久志との別れにつながった。





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